根子岳のギザギザ頭


 阿蘇の中央火口丘、阿蘇五岳と呼ばれる
根子岳(1433m)、高岳(1592m)中岳
(1506m)、杵島岳(1321m)、烏帽子岳
(1337m)<写真上、左から>は、全体的
に丸い形をしていますが、なぜか根子岳だ
けはギザギザ頭をしています。
 それにちなんだ伝説をご紹介します。

 阿蘇の神様、健磐龍命は阿蘇の五つの山の兄弟達をたいそうかわいがっていました。その
末っ子の根子岳は、兄弟の中で一番背が低いのでいつも背伸びしていましたが、いっこうに
背が高くなる気配がありません。
 そこで、一計を案じた根子岳は、荻岳付近に住む鬼達に「あんた達の力で、一晩のうちに背
を高くしてもらいたい。」と頼み込みました。
 頼まれた鬼達は、鬼の名誉とばかりに馬力をかけ、夜通しかけて荻岳の周りから運んだ石や
岩をどんどん根子岳に積み上げました。夜が明けた頃には、兄弟中一番背の高かった四男の
高岳を追い越してしまいました。
 東の空が白み始めると、根子岳の峰々に雲がかかり、それはそれは美しいばかりでなく、何
ともいえない気高ささえ感じるほどでした。根子岳は、「どうだい、兄さん達!雲を従えそびえ立
つ私の姿は」と、自分が一番偉いと言わんばかりに肩をそびえかしました。
 父の健磐龍命は、そんな様子をじっと見ておられましたが、「近頃の根子岳は私の言うことに
も素直に従わないことが多くなり、時には逆らうことさえあってどうも鼻持ちならん。今のうちに
傲慢な性根をたたき直しておかねば」と思い、「兄さん達を見下しておごり高ぶることは許さん。
わかったか。」と、大きな声でいさめながら、枝を束ねた竹の棒で高くなった根子岳の頭をたた
いて、もとのようにしてしまいました。
 根子岳の頭がギザギザになったのはそのためだそうです。

鬼達が石や岩を採って低くなったところが竹田
盆地で、健磐龍命から怒られた鬼達が逃げる
途中、あわてて捨てていったあとが荻岳になっ
たという話もあります。

<左の写真は、根子岳から見た阿蘇外輪の荻
岳(843m)、その向こうに竹田盆地が広がる>

*参考資料*
   「阿蘇の昔むかし」(立野ダム工事事務所編)






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